【手帳術】1日16時間勤務から4時半退勤へ。手帳が「相棒」になるまで with 蒼井櫻子(教員専門ライフコーチ)

「定時で帰るのは不可能だ」と、長時間勤務が当たり前になっていないだろうか?

高校教師時代、1日16時間働き、職員室で倒れてうつ病を発症した。そこから残業時間を4割減らし、早くて4時、忙しい時期でも6時半には退勤できるようになった。その転機になったのが、手帳の使い方だったという。今は教員専門ライフコーチとして活動する蒼井櫻子さんに、周りからの評価を落とさず、定時退社を実現するための手帳の使い方を詳しくうかがった。

【この記事でわかること】
・手帳を「書くだけ」で終わらせてしまう人に共通する原因
・手帳が続く人と続かない人の違い
・予定を立てる前に、まずやるべきこと
・スケジュールを詰め込みすぎる「パズル」という失敗パターンとその避け方
・教員専門ライフコーチ蒼井櫻子さんが手帳を「相棒」と呼ぶ理由

さらに詳しくは、こちらからポッドキャストをお聞きください。

目次

手帳を「書くだけ」で終わらせてしまう原因とは

── 手帳を使い始めたのは、いつ頃からですか。

最初に手帳を手にしたのは、母が化粧品を買った時のおまけでした。マンスリータイプの、縦長の手帳です。

それが嬉しくて、大人になった気がして、毎年1冊買うようになりました。でも書くことといえば、テストやレポートの締め切り、大学生になってからはバイトの予定くらい。ほとんど真っ白なページでした。

教員一年目の秋頃、思い切って1日1ページのほぼ日手帳を使い始めました。分厚い手帳を持って職場を行ったり来たりするので、「何それ、図鑑?」と言われたこともあります。それでもタスク管理にも時間管理にもなっていなくて、備忘録と日記になっているだけでした。

書くだけで、何も整理していない。それが、うまく使えていなかった時期です。そしてその「とにかく書くだけ」の時期は、まさに残業時間もどんどん増えていく時期と重なっていました。

── 書く量と残業時間が、一緒に増えていったんですね。

そうなんです。増やすことで、私は頑張っているという確認をしていたんだと思います。こんなに頑張っているんだから、関係がうまくいかない上司にも認めてもらえるはずだと思いながら、ずっと書いていました。

一番の失敗は、振り返りをしていなかったことです。

今週の記録から何がわかるか、次の1週間をどう工夫するか。それを一切していませんでした。書きっぱなしで、書いている自分に満足していた。だから、いつまでも破綻する計画を立て続けていたんだと思います。

手帳が続かない最大の原因は「書くこと」自体が目的化し、振り返りをしないまま書き続けてしまうことにある。

手帳が続く人と続かない人の違い

── その後、いろいろな手帳を試されたそうですね。

はい。ホリゾンタルタイプ(横書き)、ほぼ日のカズン、バレットジャーナル(手書きで枠を書く)、バーチカルタイプ(縦書き)。手帳難民でした。

バレットジャーナルは、書かないと先のページが存在しないので、私にはかえって不安が増してしまいました。1ヶ月先、3ヶ月先がどうなっているのか見えないと落ち着かないタイプだったんです。

最終的にたどり着いたのが、今使っているバーチカルタイプ(縦書き)の手帳です。もう10年使っています。

蒼井さんが10年使っている「CITTA手帳」

── 続く人と、続かない人。その違いは何だと思いますか。

続く人は、自分自身に手帳を寄せていくんです。

手帳が好きな人は、他人の手帳を見るのが好きだと思うんですね。でも、最初は手帳術の収集という感覚で見ていても、だんだん批判的に見るようになっていく。この方法を採用したら自分にはこういう不都合が出るな、この書き方なら今の使いにくさが解消されるな、と考えながら見るようになるんです。

続かない場合は、逆に手帳や手帳術に自分を寄せに行こうとしてしまう。

このレイアウトだからこう書かなきゃいけない、正解の使い方をしなきゃいけないと思ってしまうと、続かなくなります。

それから、本当は手帳自体が必要ないという場合もあります。かっこいい自分になりたいという願望が本質だったりする。その場合は、手帳以外の方法を試した方がうまくいくこともあります。

手帳が続く人は「手帳に自分を合わせる」のではなく「手帳を自分に合わせて使いやすく作り変える」。

予定より先に、まず記録をつける

── なんとなく予定だけを書いている人には、どんなアドバイスをしますか。

予定はいったん横に置いて、まず記録を取ってくださいと伝えています。何時に起きて、何時に家を出て、何にどれくらい時間を使ったか。全部記録していくと、自分が思っている時間よりも、実際に使える時間はずっと少ないことがわかります

もう一つ、最初にやってしまいがちな失敗パターンがあって、それは「パズル」をやってしまうことです。計画錯誤という認知バイアスがあって、人は計画を立てる時に必ず願望が入ってしまいます。このタスクは30分で終わらせたい、という予測のもとに、バッファーなしでぴったり予定を詰め込んでしまう。それが一番しやすい失敗です。

予定通りに動けない人には、タスクを細分化することを勧めています。

大きな報告書なら、枠だけ作る、アイデア出しだけする、というところから始める。頭が疲れている日は、日付と枠だけ書いておいて、代替案をあらかじめ用意しておく。それだけでも違います。

反対に、わかっている未来の予定は、先に書いてしまっていいんです。友達の誕生日を先に書くのと同じ感覚で、テスト作成の開始日や行事の準備日も、先取りして書いてしまう。覚えておけないなら、書けばいい。そのための手帳です。

「パズル」とは、願望込みの見積もりでスキマなく予定を詰め込んでしまう失敗パターンのこと。対策は、予定を立てる前にまず1週間分の行動記録を取ること。

週に1回の「振り返り」で何をしているのか

── 振り返りは、今はどんな風にされているんですか。

週末の手帳時間に、まず最初にノートに振り返りをします。A5サイズのノートを、ページをうまく折って3分割にするんです。一番左側に、その1週間で起こった意義のあることやチャレンジしたこと。真ん中に、その1週間の自分の考察や分析。右側に、それを踏まえて翌週どう過ごすか、ToDoを書きます。それをやってから、スケジュール帳に落とし込んでいく。

1日ごとの空白のところにも日記を書いていて、そこで今日はどんな1日だったかを振り返ります。手帳を開きっぱなしにしているので、見るたびにここまでの流れを振り返っている感じもありますね。

── 振り返りをすることで、何がわかってくるんですか。

自分のことが分かってくるのが、一番のメリットです。自分のバイオリズムや、仕事をする中でどうしても気になってしまうところ、自分の特性が分かってくる。そうすると、必要以上に自分を責めなくて済みますし、「いやいや、冷静に考えたら私ってこういう人だし」と思えるようになって、心に余裕ができる感じがあります。

振り返りは、週末にA5ノートを3分割(気づき・考察・翌週のToDo)して行い、その内容をスケジュール帳に落とし込む。振り返りを続けることで自分の思考の癖や特性が見えてきて、必要以上に自分を責めなくなる。

手帳を「相棒」と呼ぶ理由

── 手帳を使うことの目的を、一言で言うとしたら。

私はよく、手帳を相棒にしましょうと言います。もう自分の分身みたいな感じです。

自分の現状を教えてくれる。ちょっと調子悪いから寝た方がいいんじゃない、とか、たまには頑張ったね、とねぎらってくれたり。こういう考え方に囚われていませんか、と言ってくれたり。紙の塊としては、もう見ていないかもしれません。自分の今が、そのまま鏡のように映されている。そんな役割です。

きっかけは、ふとした瞬間でした。自分が囚われている考えがあると気づいた時に、それを手帳にちょこちょこ書くようになったんです。心療内科に通っていた頃、前回の診察から今日までどう過ごしたかを全部読み上げるために、細かく日記のようなものを書き始めました。

悲観的だったり、心配性だったり、完璧主義で人の仕事まで頭の中でジャッジしてしまう自分に、そこで気づいたんだと思います。必要に駆られて書いた日記から、自分のことがだんだん見えてきて、意図的に記録を残すようになりました。

いろんな手帳ユーザーの方と話すと、私ほど手帳と距離が近い人はあまりいないのかもしれない、と感じることがあります。何でも書いてしまうので、これを手帳に書いてはいけないんじゃないか、という壁があまりないんです。自分がなくなったら、棺に入れてほしいくらいの感覚です。

蒼井櫻子さんにとって手帳とは、単なるスケジュール管理ツールではなく「自分の今を映す鏡」であり「相棒」である。

手帳の書き方は、変わっていっていい

私の手帳術も、どんどん変わっています。今持っている手帳が2017年からのものですが、当時は字が大きくて、今は米粒みたいに細かい字を書いています。

書いてある内容もだいぶ変わっていて、目標にしていた退勤時間が8時半、8時だったのが、今では4時、4時半になっている。書いている本人は、その時そんなに意識していないんです。少しずつ早く帰れるようになって、もう少し早く行けるかなと思っているだけで。振り返ってみて初めて、変化に気づきます。

手帳の書き方は、どんどん変化していって大丈夫です。それを伝えられたらいいなと思っています。

蒼井櫻子さんは現在、完璧主義や自責思考を背景に身を削り続けてきた先生方に向けて、コーチングとプランニングのサポートを行っている。ホームページでは無料プレゼントも用意されているとのことなので、手帳やジャーナリングに関心がある方は、覗いてみてほしい。
また、本格的に手帳を使って勤務時間を改善したい人は、オンライン講座を受講されることをおすすめする。

【まとめ】
・手帳が続かない原因は、書くだけで振り返りをしないこと
・続く人は「手帳を自分に合わせて」作り変えていく
・予定より先に、1週間分の行動記録を取ることから始める
・「パズル」(願望込みの詰め込み計画)を避け、タスクは細分化する
・わかっている未来の予定は、先に書いてしまってよい
・手帳は、自分の今を映す「鏡」であり「相棒」になり得る

まず、予定より先に、記録をつけてみる。今日から、小さく始めてみませんか。

教員専門ライフコーチ
蒼井櫻子

経歴・実績

  • 元高校教師。教員時代は1日16時間勤務、職員室で倒れてうつ病を発症
  • うつ病と闘いながら働き方を見直し、勤務時間を段階的に短縮
  • 最終的に、早くて4時、忙しい時期でも6時半には退勤できるように
  • 残業時間は月80時間→46時間まで削減(約4割減)
  • 手帳・スケジュール管理を10年以上研究・実践(現在の手帳は使用10年目)

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この記事を書いた人

国内商社のビジネス開発・米国バイオ研究者を経て、47歳でライフコーチへ。科学的根拠と内面探究を組み合わせた、異色のコーチとして、40代・50代の変容に関わる。ポジティブ心理学・成人発達理論をベースにしたライフコーチ。アイオワの田舎で夫と息子の三人暮らし。

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