Ep #166: なぜ人は「終わりのない学び」を選ぶのか? with 日野ゆう子さん【ビジネス英語コミュニケーションコンサルタント】

「これ、何の役に立つんだろう」

新しいことを学び始めるたびに、頭のどこかでそんな声が聞こえる。20代のころは気にならなかったのに、40代になると、学びに対して無意識にコストパフォーマンスを計算して、ためらうことありませんか?

時間は有限。

仕事も、家庭も、すでに手いっぱい。だから「役に立つかどうかわからないもの」に時間を使うことへの罪悪感や無駄にしてしまう不安がどうしてもつきまとう。

でも最近、その問いへの答えが変わったのを感じます。

言語教育に25年間携わり、のべ4000人以上の英語力を引き上げてきたビジネス英語コミュニケーションコンサルタントの日野優子さんと、ポッドキャストで大人の学びをテーマにお話ししました。

ポッドキャストはこちらからお聞きください。


目次

人はそもそも、成長したがる生き物

日野さんが話してくれた脳外科医ドティ先生の言葉が興味深かったです。人間の脳は、発達段階から「人のためにする」ことがデフォルトに組み込まれているそう。

車が欲しい、認められたいという動機も悪くはないけれど、もともと人間が最もエネルギーを発揮できるのは、誰かの役に立っているという実感があるときだといいます。

そしてもう一つ、私が長年コーチングや心理学を学ぶ中で、繰り返し言われること。

人は、成長したがる生き物。つまり、成長したいという基本的な欲求がある

子どもの頃を思い出してみてください。

誰に言われなくても、歩けるようになりたくて何度も転びました。字が書けるようになりたくて、紙が破れるまで鉛筆を握りました。学ぶことそのものが、喜びだった時期が誰にでもあるはず。

それがいつの間にか、「役に立つかどうか」「無駄にならないか」というコスパやタイパ基準にすり替わっていく。

でも本来、学ぶ衝動は人間のデフォルト機能。それを封印しているのは、大人になるなかで学んだ「効率」という価値観なのかもしれません。


「何者かにならなければ」という重さを降ろすとき

日野さんはこんなことを話してくれました。20代・30代のころは、「何者かであることを証明するために」学んでいたと。外に向けて言えるものを持つために、資格を取り、スキルを積んできたそうです。

私にも、まったく同じ時期がありました。

コーチングを学び始めたころ、「これで何ができるようになるか」をずっと考えていました。学びの先にある「結果」や「肩書き」を担保にしないと、学ぶことへの理由ややる気が持てなかったのです。

コーチングを学び始めてから、気づきました。コーチング、自己啓発、人の可能性の学びには終わりがない。

人の心の動き、意識の構造、可能性の広がり方。アリストテレスの時代から今日まで、世界中の人が探求し続けているテーマです。それは、今この瞬間に答えが出るものではありません。

「終わりがないから楽しめる」ことに気がついて、はじめて、生きている間にどこかに到達しなければいけない、という気持ちが薄れ、力が抜けました。

この学びは、何かになるためじゃなくていい」と思えた瞬間に、学びがぐっと軽くなりました。


停滞期は「失敗」じゃない。脳が回路を再構築している期間

学び続けていれば、必ずプラトー(停滞期)が来ます。

英語でも、コーチングでも、どんなスキルでも同じ。やっているのに上達している実感がない。変化が見えない。「このまま続けても意味があるのだろうか」という疑念が、じわじわと湧いてくる時期。

日野さんが言語コーチングや脳神経科学を学ぶ中で学んだ解釈が、私にもとても腑に落ちました。

停滞しているように見える時期、脳は実は猛烈に動いています。新しいシナプスをつなぎ、回路を編み直し、情報を統合しています。外からは見えないだけで、頭の中では変化の準備が着々と進んでいるのです。

だから、変化が見えないことと、成長していないことはイコールではない。

英語の学習で言えば、ある日突然「聞こえるようになった」と感じる瞬間があります。コーチングで言えば、以前なら3日間引きずっていた怒りが、今日は30分で収まっていたと気づく瞬間があります。

変化は、じわじわとではなく、ある日ふと「あ、変わった」という形でやってくるのはよくあること。

ラトーはゴールへの道の途中にある休憩地点ではなく、変化が水面下で起きている「準備の時間」だと知っているだけで、あの苦しい停滞期の景色はまったく違うものに見えてきます。


合わない学びをやめることは、前進です

「何度学びを始めても続かない」という声をよく聞きます。そして多くの方が「自分は継続できない人間だ」と決めつけてしまい、新しいチャレンジをしなくなる。

でも、本当にそうでしょうか。

日野さんはかつて、アルバイトをいくつもやめてきたと話してくれました。飲食も、販売も、気づけば続いていなかったそうです。でも教育系の仕事だけは、辞めようという発想すら起きなかったといいます

振り返ってみると、続かなかったのは、「合わなかっただけ」。自分の継続力の問題ではなく、その学び方・その環境・その先生との相性の問題だった可能性の方がずっと高いのです。

英語学習でも同じことが起きます。

最初に出会った学習法がスパルタ式で、それがトラウマになって英語そのものが嫌いになってしまう方がいます。でも本当は、その方に合う方法があるだけで、英語が嫌いなわけではありません。

やめた経験を「失敗の証拠」にしなくていい。それは合わないものを見つけた」という情報収集の結果です。試行錯誤の中でしか、「自分に合う学び」は見えてきません。


学ぶことそのものが、すでに豊かさです

最後に、日野さんが話してくれたエピソードが忘れられません。

101歳で亡くなった友人のおばあさんがいたそうです。80歳を過ぎてからピアノを習い始め、iPadを使いこなし、「何歳からでも、やりたいことはやったらいい」と言い続けた方だったといいます。

40代・50代は、人生のどのあたりにいるのでしょう。まだ折り返し地点にも来ていないかもしれません。

「今さら」でも「遅すぎ」もない。そして「役に立つかどうか」を決めるのは、学ぶ前の自分じゃなくていいのかもしれない。

学ぶことそのものが、すでに幸せなこと。

知らなかったことが見えるようになること、昨日の自分よりも少しだけ世界が広く感じられること、それ自体がこの人生の豊かさだと、私はようやく腑に落ちています。

終わりがないから、飽きない。上限がないから、面白い。まさに「道」。

あなたが「なんとなく気になる」と思っているその学び、明確な理由なんてなくていいから、始めてみてはどうでしょう?きっと新しい景色が見えてくると思います。

ポッドキャストはこちらからお聞きください。

日野ゆう子さん

言語教育分野を専門にし、これまで日本語教育と英語教育に25年以上従事、のべ4000人以上へ指導する。大手英会話学校や大学授業、海外公立学校や、高校教育など、幅広い教育経験と、学びをもとに、現在では、「英語力は高いのに英会話に苦手意識があり仕事で力が発揮できない」というお悩みをお持ちの方を中心に英語を「学習や評価対象」ではなく仕事やコミュニケーションのための使える言葉」にしていくための幅広いサポートを提供。

研究者や大学教員をはじめ、医師、エンジニア、外資系、国内企業の会社員や経営者、通訳翻訳者の方など、実務の現場で英語を使うプロフェッショナルな方にあわせた個別の英会話力を支援。

ポッドキャストBuilding Bridgesでは、もう英語が読める人の話すスキルとマインドを育てるを発信。すで累計25,000回以上再生 されている人気ポッドキャスト。

人生の踊り場から、次のステージへ

今、自分がどういう中年の変化の中にいるのか?ミッドライフ成熟度チェックリストを作りました。

20代、30代と同じ価値観のまま、40代、50代を過ごそうとすると、脳と心は深刻な不調をきたします。

このワークを通じて、「今、自分の中で起きている構造改革」を客観的に理解してみましょう。


それは、あなたがこれまでの経験を「知恵」に変え、より大きな影響力を発揮する「成熟した大人」へと、サナギからきれいな蝶へと変容するための、最も大切なプロセスです。

このチェックリストは、あなたの本質に寄り添いながら、次のレベルへと進むためのコンパスです。ぜひご活用ください。

ご希望の方は、メールでお送りしますので受取先のメールアドレスとお名前をご記入ください。

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この記事を書いた人

国内商社のビジネス開発・米国バイオ研究者を経て、47歳でライフコーチへ。科学的根拠と内面探究を組み合わせた、異色のコーチとして、40代・50代の変容に関わる。ポジティブ心理学・成人発達理論をベースにしたライフコーチ。アイオワの田舎で夫と息子の三人暮らし。

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