頑張ったら怒られた。楽したら褒められた。フランスが教えてくれた「楽していい」の理由 with トレオレル美智子さん【フランス在住8人子育てワーキングマザー】

頑張ることが正しい。助けを求めるのは弱さだ。そう思い込んだまま、ギリギリまで一人で抱え込んでいないだろうか。

フランス南西部に暮らすトレオレル美智子さんは、8人の子どもを育てながら著者・講演家として活動している。日本でのモラハラ、うつ病、離婚。フランス語が一言も話せない状態での7人の子連れシングルマザーとしての海外生活。どん底からなんども立ち上がった、という言葉がこれほどぴったりな人生もない。

そんな美智子さんがフランスで学んだのは、「楽していい」「助けていい」「苦しいふりをしなくていい」という、ごく単純な真実だった。「私だけが我慢する」と頑張っていた美智子さんが、どうやってフランス流の休み方を実践してきたのか?その変化の秘密を詳しくお聞きした。


ポッドキャストはこちらからお聞きください。前編、後編でお届けします。

目次

フランスに行けば幸せになれると思っていた

── フランスに来た頃のことを教えてください。

フランス人の夫と再婚し、2人の子どもを連れてフランスへ渡りました。日本はストレス社会で苦しんだ。フランス人はみんな楽しそうにしている。だから、フランスに行けば幸せになれると思っていたんです。

でも実際に来てみたら、フランス語がまったく話せない。日本の友達もいない、フランスの友達もいない。毎日イライラしていました。フランス人がワイワイフランス語で普通に喋りかけてくる。それが当時はものすごく腹立たしくて。日本みたいにゆっくり喋ってくれないのか、私に気遣えないのかって周りの人が意地悪に見えていた時期が長く続きました。

世界がひっくり返った、スーパーのレジで

── そこからどのように変わっていったのですか?

フランスに来て十年ほどが経った頃のことです。

フランス語がまだうまく話せなかった頃のことです。スーパーで会計の間違いに気づき、受付に申し出ました。担当者は私がフランス語を話せないとわかると、目を見開いて、単語一つひとつをゆっくりと、まるで0歳の子供に語りかけるように説明してくれたんです

その瞬間、私の中で何かが弾けて。

「馬鹿にすんなよ、あたし。大人なんだけど子供扱いしないでくれる。」

優しくされたのに、怒りがこみ上げてきました。怒りを抱えたまま車に戻って座ったら、ふとあれ?と思い出したんです。

そういえばこれ、私がやってほしいってずっと思ってたはずだよなぁと。なのに、なんで私は怒ってるんだろうと。

フランスに来たばかりの頃、フランス人たちが私を特別扱いせず普通の大人として話しかけてくれました。あの扱いが欲しかった。

だとすれば、今日の受付の人のやさしさも、あの頃の腹がたった扱いも、どちらも私のことを思ってくれていたのではないか。真逆の行動が、どちらも良いことだった。

今まで全部ネガティブに見えていたことが、ポジティブに見え始める。結構大きな扉が開いた瞬間でしたね。

部屋の隅で下を向いていた時、誰も近寄ってこなかったことがありました。仲間外れにされていると感じていましたが、本当は違っていたんです。「今はそっとしておいてほしいんだな。話しかけないでほしいんだな」とみんなが察して、わざと距離を置いてくれていた。

世界は、ずっと優しかったんです。ただ、フィルターが違っていただけで。


頑張ってると怒られ、楽したと言ったら喜ばれた

── その後はどのような気づきや変化がありましたか?

その後、フランス語も話せないまま、7人の子連れシングルマザーになるという、強制的な大きなステップがありましたね。

子供たちが18歳になるまで朝も昼も夜も全部働いて尽くすんだと。そう思っていたんですが、一番下がまだ2歳で、あと16年あると気づいた時に、さすがにそれはやりたくないなぁという気持ちが芽生えてきて。子供のために生きるシングルマザーじゃなくて、自分のために生きるシングルマザーをやってみようと思いましたね。

── 自分のために生きると決めて、実際には変われましたか?

思っていても、なかなかできなかったんです。そんなある日、ものすごく怒られました。フランス人のマダムに。

さすがに7人の子どもを抱えて無職だったので、経済的に限界を迎え、最後のギリギリになってようやく支援団体の門を叩いたんです。マダムの前で、低姿勢でこう申し出ました。

ちゃんと全部やっています。料理も掃除も洗濯も子どものお世話も、仕事も全部一人でやれるだけやってきました。それでも足りなくなってしまったから、子供たちの分だけでいいので助けてください。ごめんなさいって。

するとマダムが、ブチ切れたんです。

「あなた何してるの。もっと楽しなくちゃダメでしょ。」

ボロボロの状態でようやく助けを求めに来て、また怒られました。悲しくて、落ち込んで。でもマダムはそれでも怒りながら、大量の冷凍食品や缶詰を袋に詰め込んで渡してくれました。

翌週また行って、報告しました。ありがとうございました。おかげでとても楽ができました、って。

その瞬間、マダムがニコーっと笑ってくれたんです。

「いいわね。その調子。」

周りにいた人たちも、お祭りのように喜び出して。

私が助けてって言ったら、みんなが幸せになったんだなぁと気づきました。助けてっていうのって、そんな悪いことじゃなかったんだ、と。

頑張ってると言ったら怒られて、楽しましたと言ったら喜ばれた。がらっと、ひっくり返りましたね。

落ち切る直前で余裕を与えてもらったおかげで、復活までの道のりが短かったし、体力も気力もあったんです。助けてって早めに言った方が、みんなのためなんだなって思いましたね。

トレオレル美智子さん フランス南西部在住・8人子育てワーキングマザー/著者・講演家・セミナー研修講師 新刊『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』2026年7月21日発売


苦しいふりをしなくてもいい

もう一つ気づいたことがあります。助けてもらった後、日本人的な感覚では「まだ苦しいふりをしていなければいけない」と感じてしまうんですよね。本当は楽になっているのに、そう見せてはいけないと。

でも、助かりました、楽ですと言ったらみんなが喜んでくれた。苦しいふりは、求められていなかったんです。

這い上がってから返せばいい。出世払いでいいんです。

自分を犠牲にしなくていい

人は傷つけちゃだめだって学ぶんですけど、自分で自分を傷つけちゃダメだって学ばないみたいで。この世に生まれてきて犠牲になってもいいよみたいな命を授かってる人は、いないはずなんですよ。

フランス人は、自分へのしわ寄せを許しません。なんで私にしわ寄せくるのって、もうそこは家庭内でも立ち上がる。誰か一人の犠牲の上に成り立つことのない、そんな家庭を作るための仕組みを、家族全員で共有しているんです。

後編はこちらからお聞きください。

テーブルが汚いまま寝たら、翌朝の方が早く終わった

── フランス流を実際に試してみて、よかったことはありましたか?

今の夫はザ・フランス人で、フランス語しか話さない、フランスを出たことのない人です。言ってみれば、フランスそのもの。この人と結婚してから、フランスのやり方を一回は試してみようという姿勢で暮らしています。

ある夜、台所のテーブルに食器と鍋が山積みになっていた時のことです。夫が言いました。「明日の朝やればいいじゃん。寝にいこうよ。」

すごい罪悪感と「なんてダメな母親なんだ」という思いを抱えながら、それでも夫の言う通りに寝に行ったんです。

翌朝、元気にさらさらっと片付け始めました。いつもより睡眠が取れていたから元気で、元気だから片付けが早くて、あっという間に終わってしまった。

フランス人のやり方って一見だらしないって見えるんですけど、実は効率を上げてたんだなって気づいた瞬間でした。


夜ご飯、何が食べたい?と子どもに聞かない

── 忙しく働いているお母さんへ、他にもフランス流のおすすめはありますか?

夜ご飯何食べたいって、子供に聞くのをやめてみてください。

子供が食べたいものを聞いて作ってあげるのは優しいんですけど、いつも子どもに合わせてくるお母さんだと、子供はいざ悩んだ時に「心配かけたくないから」と思って相談しにくくなってしまうんです。

一方で、自分が食べたいものを作って「ほら、美味しいぞ、食べなさい」というお母さんには、「この人に相談しても大丈夫そう」と思いやすい。

自分が何を食べたいかを知ることから、始めてみてください。テーブルが汚いまま寝てみる。全部やらなくていい、一つだけでいい。

楽していい。助けていい。苦しいふりをしなくていい。世界は、ずっと優しかったんです。

新刊『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』

── 今日お話しいただいた内容が詰まった新刊について教えてください。

今日喋ったことがポロポロ入っています。テーブルを残したまま寝に行ったやつとか、フランス人は楽するけど結局成果を上げるんだよっていう部分だったりとか。

具体的なマネジメントの方法を教える本ではなくて、全職業に共通した働き方の姿勢を書きました。ストレスを溜めない、疲れない、でも成果がどんどん上がる。そのポイントをぎゅっと入れています。

休み方も、休むって言ったら寝ることだと思うじゃないですか。違うんです。寝ないで動くんですよ。じっとしていると頭の中でいっぱい考えてモヤモヤしてしまう。体は休んでいても心が休んでいなかったら、体も結局休めていない。だから、休むために動きましょう、というのが「全力の休み方」なんです。

── どんな方に読んでほしいですか?

ストレスを溜めながら働いている人はもちろん、一日が自分のやりたいことをせずに終わってしまってクタクタな人、プライベートを後回しにしている人、自分を犠牲にして全部背負ってしまうお母さんたち

あとは若い人にもぜひ読んでほしいですね。日本で教わってきたけど、なんか違う、苦しいと感じている人が読んだら、フランスの考え方がインストールされて楽になるんじゃないかと思います。

私自身、元々すごく気にしすぎのうつ病人間でした。あの頃の気持ちを決して忘れずに、そのレベルの人にも使えるように書きました。フランスに移住しなくても、今いる場所から試せることがきっと見つかるはずです

トレオレル美智子さん フランス南西部在住・8人子育てワーキングマザー/著者・講演家・セミナー研修講師 新刊『フランス人の気楽な働き方、全力の休み方』2026年7月21日発売

トレオレル美智子さん 講演などの依頼はオフィシャルサイトやDMでお尋ねください。
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人生の踊り場から、次のステージへ

今、自分がどういう中年の変化の中にいるのか?ミッドライフ成熟度チェックリストを作りました。

20代、30代と同じ価値観のまま、40代、50代を過ごそうとすると、脳と心は深刻な不調をきたします。

このワークを通じて、「今、自分の中で起きている構造改革」を客観的に理解してみましょう。


それは、あなたがこれまでの経験を「知恵」に変え、より大きな影響力を発揮する「成熟した大人」へと、サナギからきれいな蝶へと変容するための、最も大切なプロセスです。

このチェックリストは、あなたの本質に寄り添いながら、次のレベルへと進むためのコンパスです。ぜひご活用ください。

ご希望の方は、メールでお送りしますので受取先のメールアドレスとお名前をご記入ください。

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この記事を書いた人

国内商社のビジネス開発・米国バイオ研究者を経て、47歳でライフコーチへ。科学的根拠と内面探究を組み合わせた、異色のコーチとして、40代・50代の変容に関わる。ポジティブ心理学・成人発達理論をベースにしたライフコーチ。アイオワの田舎で夫と息子の三人暮らし。

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