「どうして分かってくれないんだろう」「信じられない」と、同僚や部下や上司、夫や妻、子どもに対してモヤモヤしたことは、誰にでもあると思う。
- 部下が動いてくれない。
- パートナーが気づいてくれない。
- 子どもが言わなくても分かるはずなのに……。
このモヤモヤの根本には、自分でも意識していない「期待」がある。と言うのは、ライフコーチのスティーブ・チャンドラー。「期待を合意に変える」というシンプルな考えで、人間関係の悩みの多くがなくなるという。
この記事で紹介するコンセプト「期待と合意」は、私のリーダーシップ向けのワークショップやエグゼクティブコーチングのテーマにもよく取り上げるものの一つだ。
私自身、この視点を取り入れて以来、人間関係やコミュニケーションが劇的に改善した。ストレスが激減した。この記事が、あなたにとって人間関係を深め、日常を豊かにするきっかけになることを願う。
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暗黙の「期待」という不自由さ

日本には、言葉にされない「暗黙の期待」が数多く存在する。いわゆる「空気をよめ」という雰囲気。
たとえば、
- エレベーターで右側に立つ
- 母親は朝食を作るべき
- 部下は上司の様子をうかがって、じゃまにならないタイミングで声をかけるべき
- 上司は、部下の質問にはすべて答えるべき
いわゆる「大人の常識」といわれる、知っていて当然、守って当たり前と期待されるルールのこと。知らない方がおかしいとか、できない人とか。守らないと迷惑な人と思われてしまう。
みんなが同じ期待をもって、同じように行動すれば、円滑な社会生活になる便利なツールではあるものの、「期待」でのコミュニケーションは2つの行き止まりに行き着いてしまうと、スティーブは語る。
1.期待が外れると「失望・怒り・裏切られた感」。怒りや不満。
2.期待が満たされても「ありがたみゼロ。当たり前」感謝しない。
期待が強いほど、この期待が満たされなかったときに深い失望や苛立ちになる。さらには、満たされても感謝や喜びを生みにくいという側面もある。
期待をベースにしたコミュニケーションでは、どちらに転んでも関係がギスギスしたものになってしまう。だからこそ、期待を合意へ変えることが欠かせない。
読者の方の中にも、思い当たることが多いのではないだろうか?
「合意」は対等なYES!

「合意」とはお互いに納得し、明確に意思を共有した状態。対等な立場がポイント誰かに。
合意が成立するためには、どちらも自由にNOを言える環境が不可欠ということだ。
強制ではなく対話を通じて築かれた合意は、お互いに安心と信頼をもたらす。反対に、一方的に押し付けられた合意は、反発をよぶ。
とはいえ、これは日常では意外と気が付かないことが多い。
親:「1時間勉強しないとYoutubeは見せないわよ。いいわね、わかった?」
子:「わかってるよ」
親:「勉強するって言ったでしょ!なんでやらないの!!」
子どもはまったく合意していない。Youtubeをたてにとられて、しぶしぶ交渉させられただけ。または強制的にYESと言わされただけ。我が家でもよくある会話、、、。
親子だけでなく、上司と部下、夫婦間でもよくおこる。合意に見せた強制。
健全な合意とは、お互いに心から自発的にYESということ。
期待ベースのコミュニケーションの落とし穴

期待だけでコミュニケーションを取ると、往々にして「(言わなくても)分かっているはず」という思い込みが起きる。
これにより職場では誤解が頻発し、家庭では感情的なすれ違いが増えていく。
一つ一つは小さくても、チリも積もれば、で気がついたら大きな問題に発展していることは、よくあることだ。
例えば、
上司と部下なら、上司は「プレゼンのドラフトを水曜日までに出してくるはず」と期待していたが、部下は木曜の夜になっても音沙汰がなく「この部下は使えない」と断定してしまう。
実際は、部下は金曜日の午前中に提出すればいいと思っていた。だけだった。
親子なら、親が「言わなくても、分かるでしょ!」とそのくらい言わなくても行動できるはずとの期待があるが、子どもはその期待に応えようとして必死に親の顔色を伺うようになる。
私も父親から「言わないと分からないのか?」と何度も怒られ、怖い思いをしていた。ある日、息子に対して「言わないと、分からないの?」と、言いそうになり、ハッとしたことがある。
子どもは、言わないと分からない。というより、勝手な「期待」は、言わないと誰にも分からないし、伝わらないのが当たり前なのだ。子どもは、一度言っても覚えていないし、すぐにできないことも多い。繰り返し伝えることが大切だと、今は分かる。
夫婦なら、誕生日に夫からの花束とカードがないから、私は夫に愛されていないと決めつけ落胆する。愛しているなら、花束とカードは当然送るべきという期待がもとになっている。
自分の考えに対しても、好きなことならサクサクと簡単にできるはずという期待があれば、実際にやってみると難しく感じてしまい「これは好きなことではない」と投げ出してしまう。
こうした悲劇は、夫や子供、部下などの相手ではなく、自分の「期待」そのものが引き起こしている。「期待」を手放し、代わりに明確な「合意」を取り入れることで、関係性は劇的に改善する。
実践的な合意づくりの4ステップ
合意を作るには、次の4つのステップを紹介する。
ステップ1:明確化する:必要なことを具体的に書き出す。
いつ、何を、どのレベルでやるのか確認するなど。この時に頑張ればできることではなく、絶対にできることで同意する。
ステップ2:リソースを確認する:お互いの状況や必要な支援を確かめる。
それを実行するために必要なサポート、時間、情報があるか、お互いに確認する。上司や親などのよりリソースを持っている側が、しっかりとサポートを提供する。
ステップ3:拒否の自由を保障する:相手が安心してNOを言える環境を作る。
難しいと感じるときは、難しいと言える。NOということに対して、何かネガティブな影響をあたえない。NOといったら、Youtubeの時間を減らすとか、評価がマイナスになるなどは、強制になる。
ステップ4:定期的に見直す:合意が守られなかった場合も責めず、より良い合意へと改善する。

合意が守られないときは、その人ができていないことを責めるのではなく、合意の内容が未熟だったというだけで、合意を作り直す。
例えば、毎週金曜日に報告するが守られないなら、毎週ではなく隔週にするとか、金曜日ではなく月曜の朝にするとか。守られる合意に作り直す。
合意が守られない時に、相手や自分を責めないで、一緒に前向きに変えていくことが健全な人間関係を育んでいく。
こうした丁寧な合意形成は、組織や家庭における信頼と効率を高め、結果的にストレスを大幅に減らすことにつながる。
合意の注意点は、合意をつくるのは相手を思い通りに動かすためではないということ。相手を都合よく動かす、都合よく変えるために「合意」を得ようとしてもうまくいかない。
反対の立場を想像したらよく分かる。
あくまでも「合意」を作ることが、良い関係や結果になるとお互いが納得していることが、優れた「合意」の条件になる。
職場や家庭で、暗黙の期待がないか?合意へと作り変える可能性はないか?もう一度見直してみよう。
待つという贅沢―期待を超えた深い信頼

期待を合意に変える。合意は確かに素晴らしいツールだが、すべてのことを合意で解決する必要はない。
人生には、ただ静かに待つことが最善な場合もある。
哲学者の鷲田清一氏は、著書『待つということ』で待てない時代だからこそ、「何を待っているのか自分でも分からない待ち」の価値を語っている。
〈待つ〉にも同じように、何を待っているのか自身にもわからないような〈待つ〉があるのではないだろうか。そう、予期ではない待機としての〈待つ〉が。あるいはさらに、あらゆる予期がことごとく 潰えたあと、諦めきったあとで、そこからようやく立ち上がってくる〈待つ〉が。
この「深い待ち」は相手の変化を信じる姿勢であり、真の信頼関係を示す美しい態度。子どもの成長や、人の変化は期限を切れない。その人のタイミングもある。
合意でコントロールできない領域では、期待を手放し「結果が来ても来なくても受け取る」という深い待ち方が必要になる。
私も、コーチングの現場で「待つこと」の価値を深く実感している。時にはただ静かに待つことでしか生まれない、貴重な成果もある。
第6章 期待から自由になり、合意と待つを使い分ける
重要なのは、すべてを合意で決めようとするのではなく、「合意すべきこと」と「待つべきこと」を区別すること。
仕事や日常的な業務は明確な合意によって効率的に進め、感情や成長といった繊細で不確実な領域は静かに待つことで相手への信頼を示す。
- コントロールできる領域 → 合意を取る
- コントロールできない領域 → 期待せずに待つ
このバランスが取れると、私たちは安心感を持ちながら人生を前に進めることができる。どちらか一方に偏らず、両方を柔軟に使い分けることで、人間関係はより深く、より豊かなものへと進化する。
あなた自身の創造性も、周囲との信頼も自然と高まっていく。
おわりに―あなたの人生を穏やかに、豊かにするために
今日からできることはシンプルです。
1.誰かにモヤモヤしたときは「私は何を期待している?」と紙に書く
期待を言語化すれば、半分は解決する
2.大事なタスクや大切なことは必ず合意を取る
期限・品質・サポートを明文化して、お互いが自発的に合意する環境を作る
3.人の成長には“結果なしの待ち”をプレゼントする
相手を信じ、自分もリラックスする最高の方法は、待つこと。
期待と合意を区別するだけで、あなたの毎日は家庭でも仕事でも驚くほどスムーズになる。ぜひ職場や家庭で試し、その変化を感じてみてほしい。
あなたの人間関係が、期待以上に大きく豊かになることを願う。
プロフェッショナル ライフ&リーダーシップコーチ
きせりえ
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参加された方の感想です。
私も参加させていただきましたが、「私のサボり癖の原因はそこにあったのかー!!」とまさに”アハ体験”がありました
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