「願えば叶う」という言葉に、少しの期待と違和感を覚えていた。
「そんな簡単にうまくいくわけない」と「もしかしたら、願うだけでいいのかも」という思いの間で揺れ動いていた。
同時に「願うだけで変わらない現実」にふてくされ、「願うだけで叶いました」というSNSの投稿に苛立ってもいた。
「願えば叶う」という言葉への違和感がすっと溶けたのは、「祈る」ことを覚えてからだ。
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祈りは神様への要求ではない
「祈り」はあくまで〈待つ〉ことのひとつのかたちであって、「神さま」への要求なのではないと、『「待つ」ということ』の中で、鷲田清一(わしだ きよかず)は伝える。
祈りは、神様への要求ではない。
この一文に出会うまで、願いも祈りも「神様への要求」と感じていた。神社にお参りしてお賽銭を入れて、家族の健康を祈る。「神様、お願いします」と。
謙虚に見せかけつつ、相手に結果を委ねるような、かすかな傲慢さを自分の中に感じていた。私は神様へ「要求」していた。
願いと祈りを同じことして感じているのは、私だけではないようだ。
『マーフィーの成功の法則100』では、「お祈りというのは願望のことですし、願いというのは、とりもなおさず祈りのことです。」とある。
私も、鷲田清一の文章に出会わなければ、祈ると願うの違いを知らずにいたかもしれない。
祈るとは
願いと祈るの違いについて、若松 英輔(わかまつ えいすけ)は『悲しみの秘義 』のはじめにの中で
祈ることと、願うことは違う。願うとは、自らが欲することを何者かに訴えることだが、祈るとは、むしろ、その何者かの声を聞くことのように思われる。
とその違いを説明している。
「いのる」の語源は、「意(い)」と「宣(の)る」であり、自分の意志や意図を宣言することだそうだ。
願うと祈るは、正反対になる。
神様に「願う」とき、人は私の欲求や望み、願いをかなえてほしいと要求する。結果を強く望み、それはときに執着となり、神様さえもコントロールしたいと感じることすらある。
神様に「祈る」とき、自分の行動や意志を宣言し、最後までやり抜けるように見守ってほしいと伝えること。その行為の中で、何者かの声を聞き、自分がなすべきことをすると決意をする。人は祈るとき、周りの人や何者かへの感謝の念を感じる。
願えば叶うではなく、祈れば叶うではないだろうか。
天動説か地動説か
願うと祈るの立場の違いは、天動説と地動説のようなものだ。似たように立場が正反対の視点に「他責」と「自責」がある。
他責は、すべてのことは周りのせいであり、周りが自分を決めているという感覚。自責とは、自分のことはすべて自分次第だという感覚。
『それでも人生にYESというという』の中でヴィクトール・フランクルは、
「私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私達に問いを提起しているからです。私たちは問われている存在なのです。」
と、「問う側」から「問われる側」へと正反対の視点を投げかける。
ヴィクトール・フランクルは、『夜と霧』の著者であり、フロイト、ユング、アドラーにならぶ4大心理学者の一人。私はユングとフランクルが好きです。
自責、祈り、問われる側へ立ってみなければ、自分の人生を生きている感覚は得られないのではないか。
やりたいことが見つからない
「もう40も半ばなのに、本気でやりたいことが何か分からない。もしかしたら、一生やりたいことが見つからないかもしれない。」
20代後半から40歳になるまで、私は自分探しにあけくれていた。何か特別な才能があるのではないかとうっすら期待し、習い事をあれこれと試しては、何一つものにならずに投げ出すことを繰り返していた。
あの頃の私は、やりたいことを自分の外側に探していた。誰かに答えを教えてほしいと願っていた。自分の内側の声には、まったく耳をかたむけていなかった。
誰かに「お前はこれをやればいい」と教えてほしかった。問う側にいた。自分で問いに答えるなど、思いもよらなかったし、問いに答える責任にも耐えられなかった。
「問われる側」という自覚を持った時、その答えを自分で出すと決意したときに、「私がやるべきこと」として「やりたいこと」がおぼろげに見えてきた。
それからライフコーチになったもののまだ迷いがあった頃のある朝、「ライフコーチでいけばいい」という何者かの声が聞こえた。
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