#136 「願う」と「祈る」

願うと祈るの違い

「願えば叶う」という言葉に、少しの期待と違和感を覚えていた。

そんな簡単にうまくいくわけない」と「もしかしたら、願うだけでいいのかも」という思いの間で揺れ動いていた。

同時に「願うだけで変わらない現実」にふてくされ、「願うだけで叶いました」というSNSの投稿に苛立ってもいた。

「願えば叶う」という言葉への違和感がすっと溶けたのは、「祈る」ことを覚えてからだ。

ポッドキャストはこちらからお聞きください。

目次

祈りは神様への要求ではない

「祈り」はあくまで〈待つ〉ことのひとつのかたちであって、「神さま」への要求なのではないと、『「待つ」ということ』の中で、鷲田清一(わしだ きよかず)は伝える。

祈りは、神様への要求ではない。

この一文に出会うまで、願いも祈りも「神様への要求」と感じていた。神社にお参りしてお賽銭を入れて、家族の健康を祈る。「神様、お願いします」と。

謙虚に見せかけつつ、相手に結果を委ねるような、かすかな傲慢さを自分の中に感じていた。私は神様へ「要求」していた。

願いと祈りを同じことして感じているのは、私だけではないようだ。

『マーフィーの成功の法則100』では、「お祈りというのは願望のことですし、願いというのは、とりもなおさず祈りのことです。」とある。

私も、鷲田清一の文章に出会わなければ、祈ると願うの違いを知らずにいたかもしれない。

祈るとは

願いと祈るの違いについて、若松 英輔(わかまつ えいすけ)は『悲しみの秘義 』のはじめにの中で

祈ることと、願うことは違う。願うとは、自らが欲することを何者かに訴えることだが、祈るとは、むしろ、その何者かの声を聞くことのように思われる。

とその違いを説明している。

「いのる」の語源は、「意(い)」と「宣(の)る」であり、自分の意志や意図を宣言することだそうだ。

願うと祈るは、正反対になる。

神様に「願う」とき、人は私の欲求や望み、願いをかなえてほしいと要求する。結果を強く望み、それはときに執着となり、神様さえもコントロールしたいと感じることすらある。

神様に「祈る」とき、自分の行動や意志を宣言し、最後までやり抜けるように見守ってほしいと伝えること。その行為の中で、何者かの声を聞き、自分がなすべきことをすると決意をする。人は祈るとき、周りの人や何者かへの感謝の念を感じる。

願えば叶うではなく、祈れば叶うではないだろうか。

天動説か地動説か

願うと祈るの立場の違いは、天動説と地動説のようなものだ。似たように立場が正反対の視点に「他責」と「自責」がある。

他責は、すべてのことは周りのせいであり、周りが自分を決めているという感覚。自責とは、自分のことはすべて自分次第だという感覚。

それでも人生にYESというという』の中でヴィクトール・フランクルは、

「私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私達に問いを提起しているからです。私たちは問われている存在なのです。

と、「問う側」から「問われる側」へと正反対の視点を投げかける。

ヴィクトール・フランクルは、『夜と霧』の著者であり、フロイト、ユング、アドラーにならぶ4大心理学者の一人。私はユングとフランクルが好きです。

自責、祈り、問われる側へ立ってみなければ、自分の人生を生きている感覚は得られないのではないか。

『待つということ』と、『悲しみの秘義』は、flier book camの心を整える哲学の部屋で紹介してもらいました。講師は、『世界は贈与でできている』『利他・ケア・傷の倫理学』の著者で哲学研究者の近内悠太さんです。このときのテーマは【孤独】でした。心の感性に触れる深い会話をしたいかたは、ぜひ。 

やりたいことが見つからない

「もう40も半ばなのに、本気でやりたいことが何か分からない。もしかしたら、一生やりたいことが見つからないかもしれない。」

20代後半から40歳になるまで、私は自分探しにあけくれていた。何か特別な才能があるのではないかとうっすら期待し、習い事をあれこれと試しては、何一つものにならずに投げ出すことを繰り返していた。

あの頃の私は、やりたいことを自分の外側に探していた。誰かに答えを教えてほしいと願っていた。自分の内側の声には、まったく耳をかたむけていなかった。

誰かに「お前はこれをやればいい」と教えてほしかった。問う側にいた。自分で問いに答えるなど、思いもよらなかったし、問いに答える責任にも耐えられなかった。

「問われる側」という自覚を持った時、その答えを自分で出すと決意したときに、「私がやるべきこと」として「やりたいこと」がおぼろげに見えてきた。

それからライフコーチになったもののまだ迷いがあった頃のある朝、「ライフコーチでいけばいい」という何者かの声が聞こえた。

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この記事を書いた人

40代、50代からの成長を支援するメンタルコーチ。後半の人生をより豊かに善く創造する方法を独自の視点で楽しくお伝えします。The Life Coach School 認定マスターライフコーチ。元遺伝子編集研究者の理系女子。コーチングは愛と勇気。

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